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知れば知るほど胸があたたかくなる〈フルクル〉の金柑コンポートタルト

おやつは癒しと笑顔。素材を活かしつつも素材に負けないものを。
店内のおやつ全てが植物性。選ぶ楽しみにあふれて。
おやつといえば、母が買ってきてくれたケーキを思い出します。箱を開けた時、ピースケーキがいくつか入っていて、「どれを選ぶ?」と聞かれて、目をキラキラさせて選んだ、そんな記憶。
それがどれほど贅沢なことか!
「子どもがアレルギーで」「病後で食事指導が入って」「グルテンフリー中なの」と、家族が集まってひと息つくシーンでも、その人だけ選択肢が〈特別〉にならざるを得ない
「その場にいるみんなが等しく『どれにする?』って選べるおやつを作りたくて」
と、椀澤さん。フルーツカッティング講師であり、フルーツギフトやナチュラルおやつをてがける『FRUCRU』の店主です。
椀澤さんが作るケーキは小麦、卵、乳不使用のナチュラルなもの。しかも、フルーツをあしらったケーキが多くて、どれもカラフルでキュート。それがショーケースに並ぶ様と言ったら!
「アレルギー持ちの子も『ショーケースの中から自由に選べる!』と楽しそうですし、親御さんも自然と笑顔になって……それが私も本当にうれしくて」

ローチョコレートにはハート型や薔薇型も。非加熱の生カカオ豆から作っているので、カカオの栄養分が余すことなく入っているそう。

開放感のある店内。少人数ならイートインも可能。ケース上にはValentineの文字があしらわれた「ロリポップチョコ」も

なにげないけれど、大切。夢の時間を叶えてくれる。
「ナチュラルもっと言えば、ヴィーガンですね。ヴィーガンのおやつはこういう味、カタチなんだよという先入観が嫌で。ヴィーガンでも〈特別〉でなく、〈ふつう〉に限りなく近いカタチと味わいの、おいしいおやつを追求したかったんです」
フルーツをたっぷりあしらうのは、フルーツギフトを手がけていると、おやつ用のフルーツも確保できるから。フルーツを無駄なく使うためにも、おやつならフルーツを活かして、かつ、ナチュラルスイーツも追求できると考えたのだそう。
それでも、最初からナチュラルスイーツを目指したのではなく、まずはロースイーツから始めたとか。
「当時、ローフードの勉強をしていたのもあって。でも、小麦、卵、砂糖、乳製品不使用、非加熱、ナッツを主に使用するスイーツだと、大人向けというか子どもが食べたくなる味だろうかと疑問を感じて」
フルーツを用いたおやつの魅力を伝えるには、ローではちょっと違うな……と感じて、模索した結果、たどり着いたのがヴィーガンであり、ナチュラルのおやつ。
冬ならではの「金柑コンポートタルト」は、金柑のコンポートと生の金柑それぞれの味わいがやさしく口から喉を伝わり、染み入るおいしさ。しっとり&サクサクのタルト生地と相まって、あたたかい飲み物と一緒に味わえばワンピースでかなりの満足感です。家族みんなで同じものを食べて「おいしいね」って言えること。それがいい。

ロールケーキや季節のタルト、華やかなモンブランなどケーキがずらり。どれもフルーツを用いつつ、おしいさを真摯に実現。青い鳥がかわいいギフトボックス。全国発送もOK。富山県産の米粉を使用したクッキーなど、焼き菓子もいっぱい!
これまでと、これからと。できることを見つけて挑戦。
始めはフルーツカッティングのレッスンをしていた椀澤さん。自宅をベースに県内各地でも行い、かつ、フルーツギフトも手がけていたそう。次第にギフトオーダーが増えたことで、リアル店舗を持つことを決意。
「その時、レッスンスペースの提供をしてくださっていた大家さんから『このままうちに来ませんか』と」
線路沿いに「食べて・癒されて・体験できる村」として2つのお家に、3台のトレーラーハウスを構える『Sympathie』に入居オープン。4年ほどトレーラーハウスに、2020年11月には家型店舗でリニューアルオープン。どうして敷地内移転に?
「大家さんの朗らかで寛容な人柄が好きで」
そんな大家さんの愛猫・めめちゃんも、たまにガラス越しにこそっと覗き込んでくるのだとか。そんな穏やかな時間が流れる今の店舗で、長く、対面販売にこだわり続けたいと椀澤さんは話します。
「人との交流が好きで、会話を大切にしたいんです。せっかく来てくださるのだから、この人はこれが好きで、これが食べられるとか、ひとつひとつを大切にしたい」
最近は高岡や砺波から訪れる人も増えてきたことで、呉西にのれん分けを想定した2店舗目をとも考え中。できることを探求し続ける椀澤さんの、「みんなで一緒に食べられるおやつ」は、まだまだ広がりを見せそうです。
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