自分のため、誰かのための特別な時間をワッフルで。

　コーヒーを淹れて、そろそろおやつの時間にしましょうか。今日のワッフルは抹茶ホワイト、ベルギーシュガー、メープル、フィグといろいろ。それからマフィンも……あっ、運良くウィークエンド・シトロンもあったの
　大切な人たちと楽しむおやつの時間は、甘くておいしい時間（もちろんおひとりさまのごほうび時間にも！）。『T&T Waffle』のワッフルは、どれを選んでも味もセンスもいい。食べると優しい甘さと香りがすーっと静かに体中に染み渡っていく感じがして、ふふっと嬉しい笑いがこぼれちゃう。
　カリカリとした食感が特徴のパールシュガーを混ぜ込んだリエージュワッフルで、中でも人気は平成29年5月に上皇皇后両陛下(現在)が富山にご来県された折、献上した抹茶ホワイト。たっぷりの抹茶が練りこまれた生地は噛むほどに香り高く、ホワイトチョコと最高の相性！　イチジクが入ったフィグも隠れ人気なのだとか。
　市街地からちょっと離れた場所に、こんなにおいしいお店があるなんて！

カリッとした表面に、しっとり生地と食べ応えのあるマフィンたち。セミドライのイチジクをトッピングするなど、口の中での調和も絶品。

リエージュワッフル専門ともあって、その種類は全部で30種。「その中から7種を日替わりで作ってお出ししています」とのことで、偶然のであいもお楽しみ！

小さなお店に大きな優しさが満ちて、あふれて。

　オーナーの藤本さんは福岡出身。福岡のトンカツ店で店長を、さらに都内のカフェでも店長を勤め、後に東京・虎ノ門でワッフルの個人店を経営してしていたけれど、ご主人の仕事についていく形で約5年前に富山へ来たのだそう。
「東京でのお店は1坪程度のスペースだったので、完全にワンオペでした。むしろ、その形が私に合っていたんです。富山で自分のお店を再開しようと考えた時も、『1歩で全て済むような、とにかく小さい店で』と思って物件を探していました」
　そうしてたどり着いた店舗は元焼肉屋。知る人ぞ知る隠れ家スタイルだったのもあり、シックでおしゃれな内装をそのまま活かして、入口や照明をちょっぴりプラス。「実はキッチンの方が広いんですよ」
　と聞いて、日替わりで様々なワッフルを作ること、同時にマフィンやパウンドケーキが焼けることに納得。
「実は昨年夏、ご来店いただいたお子様へ綿菓子をプレゼントしていたんですよ」と、コンパクトな綿菓子機も見せてくれました。
「このご時世でしょう。子どもたちの夏の思い出のひとつになれると嬉しいな…って」

メニュー前に北欧雑貨のダーラナホースがちょこんと佇む、小さなお店。「仕込みや仕入れ、準備もですが、家族の時間、自分の時間も大切にするため、不定休にさせていただいています」とのことで、訪れる前にSNSなどで確認しておくのがベター。ちなみに左の額入り写真は東京でのお店。家族にとって大切な思い出のひとつです

道は全てつながっている。これまでの道のりに感謝を。

『T&T Waffle』のワッフルは、藤本さんが19歳で単身ベルギーへ旅した時に偶然であった思い出の味。「あの時、初めての食感に感動したワッフルを、今、自分が作っていることに驚きながらも幸せを感じています」と柔らかな笑みを浮かべて話してくれました。
「東京にいた時、なかなか福岡に帰れない代わりに、家族へワッフルを贈っていたんです。大好きな祖母が病に伏す中で、電話で『あのワッフルがおいしかった』と言ってくれて。それが祖母との最期の会話でしたね。後日、母からワッフルを食べている祖母の写真が送られてきて、涙が止まりませんでした……」
　ワンオペゆえ仕事優先になってしまう。大切な人を二の次にしてしまったことを悔やみ、店を辞めようと考えたものの
「常連のお客様からお問い合わせをいただき、『待っていてくださる方がいる』と気づいて継続することができました。富山でお店を再開したのは、祖母が好きだったワッフルを無くしたくないという想いからです」
　ご主人は飲食コンサルティングで、藤本さんがこれまで勤務していた会社の上司でもありましたが、「お店の経営ノウハウは主人から叩き込まれているから」と、あえてご主人には頼らず、自分の力でお店を再開しようと決意。ご主人もまた、藤本さんの努力を知り、信頼しているから、静かに見守ってくれているのだそう。
　小学生の娘さんはそんな藤本さんを見て、「家でのママとは違う、お店でのママの切り替えぶりがかっこいい！」と惚れぼれ。「夢はワッフル屋さん」と話す娘さんの姿にも胸がキュンと高鳴りました。